大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(ネ)1735号 判決 1975年3月27日

控訴人

萩原和男

右訴訟代理人

橋本和夫

被控訴人

吉田修

外二名

右三名訴訟代理人弁護士

(以下被控訴代理人という。)

関根志世

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決中被控訴人吉田修の請求に関する控訴人敗訴部分中、金八六万三、八二九円を超える部分及びその余の被控訴人らの請求に関する控訴人敗訴部分をいずれも取り消す。被控訴人らの請求をいずれも棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張並びに証拠の提出援用及び認否は左のとおり付加するほか、原判決事実摘示と同じであるからこれを引用する(但し、原判決五枚目―記録一二丁―裏九行目に「(二)は」とある次に「被控訴人吉田田修の損害として」を付加する。)。

一、控訴代理人は「被控訴人吉田修の戸ケ崎中央診療所における治療費、入院中の手伝婦費、雑費等として被控訴人吉田晃一郎が主張する金額及び館林厚生病院における治療費として金一一三万七、一九一円を被控訴人吉田晃一郎が支払つたことは認めるが、これらはいずれも被控訴人吉田修の損害であつて被控訴人吉田晃一郎の損害ではない。しかも、館林厚生病院における治療費のうち金二二万五、〇〇〇円は本件事故と因果関係のない個室料である。更に、被控訴人吉田晃一郎が同人の損害として主張する事故現場から自宅までのハイヤー代金は一万円の限度でこれを被控訴人吉田修に生じた損害として認める。また、同被控訴人の本件事故によつて生じた精神的損害に対する慰藉料としては金七〇万円が相当であるからこの限度で支払義務を認める。」と述べた。

二、<証拠略>

理由

一当裁判所は、被控訴人らの控訴人に対する本訴請求はいずれも原審が正当として認容した限度で理由あり、その余は失当であると判断する。その理由は左のとおり付加及び訂正するほか、原判決理由説示と同一であるからこれを引用する。

(一)  原判決七枚目―記録一四丁―裏四行目に「原告」とあるところから次行の「第二号証」とあるところまでを「成立に争いのない乙第一、第二号証及びこれらにより真正に成立したと認められる甲第三号証」と訂正し、同裏六行目に「他に右認定を左右するに足りる証拠はない。」を加える。

(二)  原判決八枚目―記録一五丁―表二行目に「原告吉田晃一郎本人」とあるのを「原審及び当審における被控訴人吉田晃一郎及び当審における被控訴人吉田勝恵の各」と改め、同丁表七行目に「こと」とある次に「本件傷害は幼児の開放骨折であつた上、骨折部分が三ケ所もあつたので、二回の骨の整整形手術を受けたが、一時は骨折部分の一部を補強するため被控訴人吉田晃一郎の腰部の骨の一部を提供する手筈をした程の重症であつたこと、骨折部分の固定後、肉の盛り上りを待つて被控訴人修の大腿部等から皮膚移植のための手術をさらに二回にわたつて施行整形したこと、直接生命の危険はなかつたもののその苦痛、不安、煩らわしさはおよそ筆舌に尽し難いものがあつたこと、また右、整形手術の結果同人の大腿部に醜い瘢痕を残し、友達に嫌われたり、馬鹿にされたりする原因となつており、これがため被控訴人の性格形成、学習能率などにも好ましくない影響が出始めていることが見られること、殊に事故前は走るのが早く両親もこれに期待していたが、本件受傷以来その望みが失われたこと、したがつて、成人の場合のように直接数量化して将来の逸失利益を算定することは困難であるとしても、被控訴人修は将来とも本件事故のため相当な社会的経済的不利益を受けることを覚悟しなければならないこと及びこれに対し、控訴人は二回程見舞つたのみで右苦痛を和げるための努力をしていないことを認定しえ、右認定を左右する証拠はない。」を付加し、同行に「が認められる。」とあるのを削除する。

(三)  同庁裏四行目に「ついては、」とある次に「同被控訴人が右各金額の支出をしたことに限り」を付加し、次の行に「原告」とあるのを「原審及び当審における被控訴人吉田晃一郎」と改め、同丁裏八行目に「認められ」とある次に「((ロ)の支出中には入院中の個室使用料金二二万五、〇〇〇円が含まれるにしても((この事実は成立に争いのない乙第八号証の一ないし四によつて認定できる。))、前顕各証拠によれば、前記傷害は前認定のとおりの重傷であつた上、被控訴人吉田修は四才の幼児であつたから、常時近親者が付添い、かつ病室を家内の一室と同様に保つことが治療上必要であつたことが窺われるから右個室使用料も本件事故と相当因果関係あるものと認めるのが相当である。)」を付加する。

(四)  原判決九枚目―記録一六丁―表一行目に「認容しない。)。」とある次に「以上の各支出につき控訴人はこれらを被控訴人吉田修に生じた損害とすべきであると主張し、当裁判所も以上の事実認定の下において右の支出相当額は一応被控訴人修に生じた損害(の評価額の一部)とするものであるが、被控訴人吉田晃一郎が修に代つてその支払をした後においては、右相当額を被控訴人晃一郎の損害と観念して、同被控訴人からその支払を求めることを妨げないと解する。」を付加し、次の行に「ては、」とある次に「事案の難易、訴訟活動の内容等諸般の事情に鑑み」を付加する。

(五)  同丁表五行目に「原告吉田晃一郎」とあるのを「前掲各被控訴人」と改め、同丁裏四行目に「れる。)。」とある次に、「ところで以上認定のように被控訴人修は四才の幼児で常時近親者の付添を必要とし、しかも入院をして合計四回も手術をしたのであつて、右付添料相当額を同被控控訴人の損害(の評価額の一部)とすべきところ、右相当額を現実に付添をした被控訴人勝恵の損害と観念して同被控訴人からその支払を求めることを妨げないと解すべく、その金額については事故時から被控訴人修の二度目の退院時まで七ケ月余の間被控訴人勝恵が殆んどその業務に従事することなく、つききり看護に当つた事情を斟酌すれば前記同被控訴人の営業の減収額と相匹敵すると認められる。」を付加する。

(六)  同丁裏一一行目に「原告」とあるのを「原審及び当審における被控訴人」と改め、同行に「被告」とあるのを「原審における控訴人」と改める。

(七)  原判決一〇枚目―記録一七丁―表一一行目に「父親の原告晃一郎により、」とあるのを削除し、同丁裏七行目に「することとなり、」とあるのを「すべく、」と訂正する。

二以上の次第で、被控訴人らの控訴人に対する本訴請求を一部認容し、その余を失当として棄却した原判決は相当で本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法九五条及び八九条を適用して主文のとおりり判決する。

(吉岡進 園部秀信 兼子徹夫)

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